天井にはっきりと中年の男の顔が浮かんだ

<div class="t_h" >39: <span style="color: green; font-weight: bold;">1/4</span> <span style="color: gray;"> 03/01/14 16:46</span></div>
<div class="t_b" > 　学生の頃、練馬の木造ボロアパートに住んでた。 <br /> そこで一年くらい暮らしたある日､初めて友人が泊まる <br /> ことになった。 <br /> 飲んでるうちに終電過ぎてしまい、仕方なく俺のアパート <br /> に来たのだ。 <br /> 散らかり放題の部屋で､何とか友人の眠るスペースを作ると、 <br /> 深夜二時くらい横になった。 <br /> <br /> 「おい、これって人の顔に見えねえか？」 <br /> しばらくして友人が話し掛けてきた。 <br /> 天井を指差している。 <br /> 「そりゃシミだよ。多分上の住人が水漏れさせたんだろ」 <br /> 天井の一部が不自然に汚れているのは、越してきた当初から <br /> 知っていた。 <br /> </div><br />
<div class="t_h" >40: <span style="color: green; font-weight: bold;">2/4</span> <span style="color: gray;"> 03/01/14 16:47</span></div>
<div class="t_b" > 「あれ、おっかしいな」 <br /> 友人は立ち上がって天井を観察しだした。 <br /> 「寝てると見えるのか」 <br /> 俺はちょっと苛ついて起きると、蛍光灯の紐を引っ張って照明をつけた。 <br /> 「あっ、見えなくなった」 <br /> 「ただのシミだよ」 <br /> 友人は俺にかまわず、近くにあったテニスラケットでシミをなぞり始めた。 <br /> 「これが口だろ。そんで目。鼻はここ。うーん、何か違うな」 <br /> いつもなら部屋の電気は消して寝るのだが、友人がトイレに <br /> 行くときのことを考え、豆電球だけはつけておいたのだ。 <br /> 友人は横臥している状態なら、人の顔に見えると言う。 <br /> しつこく勧めるので、俺も同じ状態で天井を眺めた。 <br /> 確かに人の顔に見える。初めて気が付いた。 <br /> </div><br />
<div class="t_h" >41: <span style="color: green; font-weight: bold;">3/4</span> <span style="color: gray;"> 03/01/14 16:48</span></div>
<div class="t_b" > 「これって北枕になるよな」 <br /> 友人がそう言った瞬間、部屋が揺れた。 <br /> ２人とも息を呑んで当たりを窺った。 <br /> <br /> 「地震、、、、、、だよな」 <br /> 俺が恐る恐る立ち上がり、蛍光灯の紐を引っ張った時だ。 <br /> ４０Ｗの蛍光灯が点灯する瞬間、 <br /> 天井にはっきりと　中　年　の　男　の　顔　が浮かんだ。 <br /> ２人同時に声を上げ、部屋から逃げ出そうとした。 <br /> <br /> 「うるせえぞ！」 <br /> <br /> 部屋の壁を蹴る音が響き、俺は頭が真っ白になった。 <br /> </div><br />
<div class="t_h" >42: <span style="color: green; font-weight: bold;">4/4</span> <span style="color: gray;"> 03/01/14 16:49</span></div>
<div class="t_b" > 確かに右隣りから、その声は聞こえたのだが、、、、。 <br /> 俺は焦って部屋を出ようとする友人を引きとめた。 <br /> 「落ち着け！落ち着け！」 <br /> 今玄関の扉を開ければ、そこに何がいるか分からないと感じた。 <br /> 「何だよ！こんな部屋には居られねえよ」 <br /> 友人は声を押し殺して訴えた。 <br /> 「違うんだ」 <br /> 俺は友人の前に立ちふさがった。 <br /> 「隣は空き部屋なんだよ！」 <br /> きょとんとする顔つきの友人に、俺は言葉を続けた。 <br /> 「誰も住んでないんだよ」 <br /> <br /> つい最近、その木造アパートのある場所の近くまで行った。 <br /> その築４０年くらいの建物は跡形もなかった。 <br /> </div><br />