高校時代、仲間6人で海水浴に行き、海岸沿いの民宿に泊まった時
の話です。そこはシーズン中だけ民宿を営んでいるような、見た目は
全く普通の民家でした。期間は2泊3日、カップル2組と男2人で、
男女の人数は合いませんが、いわゆる仲良しメンバーでした。
ちなみに私は男2人の方の1人です。
1日目は朝から晩まで遊び、疲れもあってすぐに寝てしまいました。
2日目も朝から海に出たのですが、2人が前日から日焼けし過ぎて
ダウンしてしまい、午後の早い時間から宿で休むことになりました。
トランプをしたり昼寝をしたり、散歩がてら買い出しに行ったり、
それはそれでくつろいだ楽しい時間を過ごしました。
夜になり、入浴と夕食の後、前日できなかった宴会(?)をすること
になりました。(未成年でしたが、みんな普通に飲みますよね)
大騒ぎの楽しい時間を過ごしましたが、他の客もいるからと、宿の
主人に注意され、その後はまったり飲んでいました。1人2人と寝て
いき、全員が寝たのはそう遅くなかったと思います。
時計は見ませんでしたが、夜中だったと思います。トイレに行きた
くなり目が覚めました。疲れと酔いで重いまぶたを無理に開け、部屋
を出てすぐ左にあるトイレに向かいました。眠気が優先して、特別怖
さは感じません。
普通の家庭用の洋式トイレで、入り口のドアには四角い小さな曇り
ガラスがはめ込まれています。ドアを開けると正面が便器で、つまり
後ろがドアになります。鍵を閉め、便座を上げ、用を足します。酒を
飲んでいただけに長いです。そして、水を流した、その瞬間です。
ガタガタガタガタ……!!
ドアが揺れました。とっさにドアを見ると、そこには、巨大な目が
覗いていたのです。覗いていると言うより、押しつけているような、
曇りガラスなのにくっきりと、白目がやけに白すぎる、ガラスいっぱ
いの巨大な片目がこちらを見ていました。(後で思ったのですが、ま
ぶたもあったので巨大な顔だったのかもしれません)
ショックで息ができなくなった事まで覚えています。気がつくと朝
でした。トイレの鍵はかかったまま、私も当然倒れたままでした。思
い出して再び恐怖に襲われつつ、急いで部屋に戻りました。早朝と呼
ぶには遅く、それでも朝食前の時間でした。
ふるえる肩を自分で押さえつつ、一番仲のよかった友達を起こし、
とにかく気分を落ち着かせ、事情を話しました。酒のせいだと言われ
信じてもらえませんでしたが、その時は1人じゃないだけで助かりま
した。
朝食を取り体が温まるとだいぶ落ち着き、自分でも酒のせいだと思
えるようになってきました。もともと霊など見たことなかったし、何
より早く忘れたかったのです。
3日目の午前中も海で遊び、帰途につきました。その後は何も見る
ことはありませんが、曇りガラスは今でも苦手です。また何時、あの
生気のない、巨大な目が現れるかと思うと……